企業の離脱がうたわれるTポイント、共通ポイント事業者の先駆者として一歩進んだ取り組みも

2019年11月25日17:20

共通ポイントの世界で国内をリードしてきたTポイント・ジャパンの「Tポイント」だが、近年は楽天やNTTドコモの勢いに押されているという報道もある。そんな中、共通ポイント事業者の先駆者として、会員から預かった購買データを社会や生活者に還元するという一歩進んだ取り組みをスタートしており、形になり始めている。

会員情報を捜査当局に提供、Tポイントから競合のポイントへ切り替えも

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がT会員の情報を裁判所の令状なしに、捜査当局に提供していたことがマスコミなどで大きく取り上げられた。また、国内の共通ポイント事業をリードしてきた同社だが、百貨店の三越伊勢丹、スポーツ用品店大手のアルペン、カフェチェーンのドトールコーヒーなどがサービスを終了し、競合のポイントサービスに乗り換えたケースもある。さらに、インターネット大手のヤフー(Yahoo!JAPAN)は、キャンペーンなどで付与していた「期間固定Tポイント」を「PayPay」のボーナス(ポイント)に変更。11月26日からは、Tアライアンスを代表する企業の1つであるファミリーマートがNTTドコモの「dポイント」や楽天の「楽天ポイントカード」といったマルチポイントサービス化を図ったように、Tポイントを取り巻く環境は逆風が吹いているという声もある。

アルペンは楽天と提携

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確かに、ここ1~2年は新規アライアンスのリリースは少なくなったように見受けられ、「dポイント」や「楽天ポイントカード」の勢いに押されているように見受けられる。しかし、先行者を追う企業がより有利な条件でサービスを提案し、切り替えるケースはどの業界にもあることだろう。

Tポイント・ジャパンでは、大手との連携は他社に先駆け一巡し、2014年あたりからは、地方の有力なスーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなどへの営業をいち早く開始している。また、地方の金融機関や鉄道、商店街、スポーツクラブなどと連携した取り組みも行ってきた。サービスのすそ野の広がりは現在もなお他社をリードしている存在であることは間違いない。

「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」を発足

そんな同社が取り組むのが、会員から預かった購買データを社会や生活者に還元することだ。その1つとして、社会価値創造プロジェクト「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」を立ち上げている。「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」発足の経緯として、「Tポイント・Tカードのカルチャー・インフラを、社会のために役立てたいと考えました。Tポイント・Tカードを支持してくださる日本全国の生活者の皆さまに利益を還元するため、さまざまな社会課題の中でも、“地域共生”にフォーカスした取り組みを進めていきます」と、2017年10月に同社の担当者は説明した。

第一弾として、“地域の美味しいものを一次生産者とTカードでつくる”ことをテーマに、T会員と三陸の漁師が共同で、牡蠣を使った商品を開発し、2017年10月5日、味付き冷凍牡蠣フライ「カレーとガーリック味の大きなカキフライ」「パセリとチーズ味の大きなカキフライ」と、バジル風味の牡蠣「カキとバジルのオイル漬け」として企画した商品の発売を開始した。

第2弾は、2017年6月より、子どもたちの未来と地域コミュニティをつなぐ取り組みとして石巻・牡鹿地区を中心「Reborn-Art Festival × Tカード」を開始している。「Reborn-Art Festival × Tカード」では、アートと音楽の祭典を大人だけではなく子どもたちも一緒に参画できるものとして、地域に根差しながら将来にわたって地域活性化の源となるようなアート作品を子どもたちが主体となって制作した。同プロジェクトでは、Tカードのインフラ活用の一環として、社会貢献型Tカードの発行を行い、カード発行手数料の一部とカードの利用で貯まるTポイントの半分が、子どもたちが取り組むアート企画に役立てられた。

そして、第3弾として、2018年6月には漁業をテーマに、地域の美味しいものを一次生産者とTカードでつくる「五島の魚プロジェクト」を立ち上げた。「五島の魚プロジェクト」では、6,900万のTカードのデータとT会員ネットワークを活用しながら、五島の魚に付加価値を創出し、生活者に喜んでもらえる商品として提供することで、継続した「六次産業化」の成立に取り組む商品開発プロジェクトとなった。2019年11月13日には、プロジェクトを通じて、サイズが不揃い・魚種がマイナー・一定のロットに満たないなど、さまざまな理由により価値がつかずに流通されない「未利用魚」を活用した『五島のフィッシュハム』の発売を開始した。

現在、Tポイント・ジャパンでは、6,900万人超のT会員、194社のTポイントアライアンス企業、約50億件の購買データを有している。その資産を生かし、首里城再建への寄付など、社会貢献に役立つサービスも行っている。今後も国内の共通ポイントの先駆者として、社会に役立つサービスの創出に期待したい。

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New Retail Navi編集部

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