2019年11月15日14:00
ファーストリテイリングは、2019年11月13日、情報製造小売業への転換の一環として推し進める「有明プロジェクト」におけるサプライチェーン改革の実現に向けたパートナーシップの拡大に関する記者発表会を行った。同社では、AIとITを連動させ、全世界において全倉庫の自動化の実現を目指している。また、倉庫の自動化により、消費者が欲しい商品が店頭にあるという在庫の保持にもつながるとしている。
MUJIN、Exotec Solutions SASとグローバルで提携
ファーストリテイリングでは、2018年10月9日にダイフクと中長期的・包括的な物流に関するパートナーシップ合意を発表し、有明倉庫において、RFIDなどの活用により自動倉庫を立ち上げ、物流倉庫の一気通貫した自動化設備導入をグローバルで目指している。RFID自動検品機を用いて、無人化、高速化を実現した。また、自動かつ高速で出庫。その後、同倉庫では商品の自動ピッキングを行い、作業を効率化した。さらに、配送作業でも配送箱自体を自動で作成している。
今回、ダイフクとのパートナーシップを拡大するとともに、MUJIN、Exotec Solutions SASとのグローバルでのパートナーシップを発表した。新たに提携を発表した2社は日本での知名度はそれほど高くないとしながらも、ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井 正氏は、今後2社は成長する企業になるとした。また、インターネットがサービスと融合されることで、「サービスの世界でも人工知能、ロボティクス、センサーが共存して、世界でエンドツーエンドでサプライチェーンが成長する」とした。
ダイフク 代表取締役社長 下代 博氏は、これまでのプロジェクトを振り返り、「(ファーストリテイリングの)失敗を恐れずにすぐに実行するスピードに驚いています。成長の力になっていることを実感しています」と語った。今回のパートナーシップ締結を基に、海外においても倉庫自動化の展開を加速度的に推進していく。現在、西日本、アメリカ、オーストラリアのプロジェクトを同時に進行。ダイフクでもスピード感をもってグローバル展開のサポートをしているそうだ。
モーションプランニングAIを用いたピッキングロボットを開発
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また、MUJINとモーションプランニングAIを用いたピッキングロボットを開発し、全世界の倉庫に導入することで、倉庫の自動化を加速させるそうだ。2011年創業のMIJINは、知能ロボットコントローラの開発・販売に加え、ロボットシステムのインテグレーションを行っている。AI機能を駆使したコントローラをどのメーカーのロボットにも接続して、即知能化させることができるという。従来のロボットの動きは人間がプログラミングすることが多いが、「人がプログラミングせずに自分で考えて動いています」と、MUJIN CEO 兼 共同創業者 滝野 一征氏は話す。超多品種の物流センターにおいては、ロボットを応用するのは難しいというが、すでに工場で活躍しているとした。たとえば、eコマースのオーダーを取り分ける、検査する、梱包を自動化するといったことが可能だ。また、段ボールをどう見分けて、使うかも重要だが、梱包の自動化も実現可能だ。累計販売台数は、MUJINコントローラが世界で560台を突破し、物流多品種対応の3Dビジョンは世界第一位の350台を突破している。
有明倉庫では、入庫から保管まではできているが、ピッキングは人が介在する作業が残っている部分がある。アパレルの場合、MやLといったサイズの商品を機械で見分けることが難しいが、ピッキングロボットがすべてを自動化して、全工程が完結する取り組みを行う。また、世界中で展開する物流の自動化も実施する。さらに、ピッキングロボットは設備投資が高い課題もあるというが、ファーストリテイリングとの取り組みで、イノベーションを起こせるとした。
天井まで届くピッキングロボットを開発するExotec Solutions SAS
また、フランスのExotec Solutions SASは、商品ピッキングシステムをロボット工学により構築している。ロボットは天井まで届き、作業員の支援が可能だ。ロボットは24時間稼働可能で、工場の業務が増えた際も台数を増やすことで対応可能だ。また、ロボットの監視も可能だ。同社は2015年夏に設立し、国際展開を開始。これまでにイタリア、アメリカ、スペイン、ドイツにロボットを提供している。これまでに500台のロボットを製造しているが、「来年は1,000台を目標にします」と、Exotec Solutions SAS CEOのRomain Moulin氏は意気込みを見せる。
ファーストリテイリング グループ上席執行役員の神保拓也氏によると、「お客様のほしいものが、いつもある」環境を整えることが目的であるという。同社では、11の国と地域で、240の工場で製造し、3,500以上の店舗とeコマースで商品を販売している。サプライチェーン情報の可視化、一元化を行うことで、全世界の様々な部門が情報を共有し、意思決定の精度を高めていく方針だ。また、計画の精緻化が図れるとした。
具体的な取り組みとして、企画時には3D-CADの活用により、サンプル作成を内製化し、企画を事前にストックすることで商品提供のリードタイム削減を図る。また、生産時には、素材の事前備蓄、多頻度・小ロット発注の対応、生産工場の自動化で、過剰在庫の削減とともに、欠品の削減を目指す。さらに、輸送形態の最適化、通関手続きの標準化、システム化を行うとした。これにより、通常、1~2カ月かかっていた商品が店頭に届くまでの時間を10日ほどにしていきたい考えだ。
今後も先端企業と連携、人材確保も進める
ファーストリテイリングでは、今後も最先端の技術を持つ企業とのパートナーシップを、さらに拡大していくと同時に、サプライチェーン改革の推進をリードできる人材の採用も積極的に求めていきたいとした。同社ではすでに、Googleやアクセンチュア、東レ、島精機製作所といった企業と連携している。
なお、有明プロジェクトの完成は、5年はかかるとしているが、最短と見込む3年に近づけていきたいとした。
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